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書評

【読書レビュー】ひゃくえむ。新装版【感想】

ひゃくえむ

最近話題となっている漫画『チ。-地球の運動について-』の作者、魚豊先生。

実は、前作『ひゃくえむ』もかなりオモシロいのです。そんなひゃくえむのコミックスが新装版(上下2巻)となって3月発売されました。

あなたには才能がありますか?本作の主人公トガシはただ足が速いだけの小学生です。

もっとも日本一速いですが。

もし、このとんでもない才能のピークが小学生のときだったら…

トップを走る人間にしかわからない、追いつかれる焦り、追い越される恐怖、そしてそれを乗り越えるちから。

中学生になり陸上部に入部する娘にも読ませたいような、読ませたくないような。。。

走ることに対する喜び、苦しみ、意味が詰まったまさしく『走る哲学書 ひゃくえむ』のレビューです。

ひゃくえむはebook japanでも読めますよ。

あらすじ

小学6年生のトガシは生まれつき足が速く、100m走では全国1位。

一方同じクラスに現れた転校生小宮はネガティブで足も遅く、転校初日からいじめの対象に。

ある時から小宮はトガシから走り方を教わることで、おそるべき才能が開花し始める。

そしてトガシは今まで知らなかった敗北の恐怖を味わう。

その距離は時間に権力を与え、その距離は人間の価値を決める。その距離に人生を掛けた、その距離100Mの物語。

登場人物

トガシ

本作の主人公で100m走全国1位の小学6年生。不満も不遇も争いもないが、熱もない生活を送っていた。

そんな日々の中、突如現れた転校生小宮との真剣勝負で味わう敗北の恐怖と熱の予感。

小宮

トガシのクラスに入った転校生。暗い性格で初日からいじめの対象になってしまうが、走りを覚え徐々に才能が開花する。

それと共に知ってしまった。その速さが全てを変えてしまうと。

彼もまた、たかが100mに狂わされる人間となった。

仁神タケル

トガシ達と同じ地元にいる中学2年生。中学陸上大会において100m走最年少記録を更新した。職業体験としてトガシ達の小学校へ訪れ、トガシ、小宮の走りに衝撃を受ける。

財津

日本選手権5年連続優勝している現役最速アスリート。

高校生になった小宮の高校に後援会で訪れた際に、彼にアドバイスを送り更に小宮の才能を開花させる人物。

海棠

15年間100m走のトップレベルにいる選手。財津のライバルながら「万年2位」と言われ続けるが、それでも現実を対処しようとするトガシの同僚。

新装版について

違い

ほぼ全ページにおいて加筆修正しているとのことです。

以前に読んだコミックスは所有していないので細かい違いはわからないのですが、現在連載中のチ。の絵柄に近づいているような印象を受けました。

収録短編

新装版には上下各1話ずつ特別読み切り作品が収録されています。

どちらもスポーツを題材にした作品で、このひゃくえむの原点を感じさせます。

また下巻には新装版発売記念として、魚豊先生のロングインタビューが掲載されています。

ひゃくえむ名言集

作品内には珠玉の名言が沢山!

努力は平気で裏切る 流した汗はウソを吐く

失敗は成功の母じゃないしピンチがチャンスな訳がない

そんなこと自明だ 敗北は当然だ 疑問はない 意義もない 嫉妬もない

もう諦めた なのに なのに なんなんだよ

なんなんだ この悔しさは

引用元:魚豊『ひゃくえむ』(KCデラックス)第20話

高校生になり陸上から離れた仁神が部活復帰をかけてトガシと対決するシーンで、

才能の差を見せつけられた時の言葉です。

この後、仁神は決意し陸上部に復帰します。「俺は走るしかない」と。

浅く考えろ 世の中舐めろ 保身に走るな 勝っても攻めろ

引用元:魚豊『ひゃくえむ』(KCデラックス)第27話

小宮の高校に財津が公演に来た時の言葉です。(財津はこの高校のOB)

この後、小宮が財津に対してした質問の回答もまた名言でした、

「栄光を前に対価を差し出さなきゃならない時、ちっぽけな細胞の寄せ集め1人 人生なんかくれてやれ」

引用元:魚豊『ひゃくえむ』(KCデラックス)第27話

生まれる時代が違えば万年2着じゃなかったかもしれねぇ

でも俺は!この時代に生まれて後悔なんて!一度だってしたことねぇよ!!

無上の目標が毎々鎮座してんだ!全く!人生に!飽きないッ!!

引用元:魚豊『ひゃくえむ』(KCデラックス)第37話

財津と直接対決した時の海棠の名言。万年2位の海棠が腐らず常に努力していたからこそ出た言葉ですね。

まとめ(ネタバレあり)

本作は、小学生編、高校編、社会人編と大きく3つの括りに分かれています。各登場人物が時代ごとに別れと再会を繰り返しながら、100m走という競技で紐づけられている人間模様はまるで一本の映画を見ているような感じになりました。

作者の魚豊先生はかなりの映画フリークらしいと知り、この感じがしたのも納得できました。

トガシは決して才能にあぐらをかいているような少年(青年)ではありません。それでも才能の劣化を感じる恐怖感は才能のない私にも充分伝わるものがありました。

そして、狂気じみた走りの才能がどんどん開花していく小宮。彼は速くなる度、虚しさを感じ始めていたのでした。

高校編では追う側と追われる側の逆転。そして、次なるそれぞれの道を歩む社会人編。そして2人は100mで再び紐づけられる運命に。

ライバルモノの物語は最高に熱い!

それでは楽しい漫画ライフを!